2012年12月 アルビにて
フランソワーズ ザンフィレスコ撮影


ベルナール ヴェベール

1927年 月 日〜2013年7月9日



執筆 ピエール・マリ ガジェ 

2012年12月 アルビにて
フランソワーズ ザンフィレスコ撮影


ベルナール ヴェベール

1927年 月 日〜2013年7月9日



執筆 ピエール・マリ ガジェ 

 ミレトスのアレクシマンドロス!
 親愛なるベルナールよ。君は私たち姿勢学者に大きな力をかしてくれた。その君と私、そして全ての姿勢学者との間の相互理解のシンボルがミレトスのアレクシマンドロスだ。

 幸福、感激、歓喜!
 ロベリとスメラクの本を届けに来てくれた日の君の興奮した様子を思い出す。出版されて間もない頃のことだったが、あれからもう4年が経った。君があれほど喜んでいるのを見たのは始めてだったが、それも当然と言えよう。何故なら、それは実に重大な出来事だったからだ。確かにこの本では、アレクシマンドロスの業績を通じて人間の知性に触れることができる。

 「地球はしっかりした土台でその上に世界が乗っている。その世界は、星が留め置かれ日々新しい太陽が通り過ぎる天空によって深淵から守られている」これが、アレクシマンドロスの時代の絶対的真理であった。起源以来、人々が信じて続けてきたこの不可侵な真理を覆すために、アレクシマンドロスはどれほど強い知性を必要としたのだろう。この時代に、大胆にも地球は宇宙空間に浮いていると言ったり、地球の下には何も無いと想像したのだ。そこにはヘラクレスの腕も無ければ巨大な亀もいないし、支えになるような物は一切無いと考えたアレクシマンドロスが、当時の人々に与えた混乱を想像するのは難しい。彼に比べるとガリレイなど小さな子供のようなものだ!

 観察不可能な事実を、僅かな手掛かりをもとに理論で立証する。古代から人類はこうして知性の力を示してきた。今日では衛星によって、宇宙空間に小さな球のように浮かんだ地球を観察できる。しかしアレクシマンドロスの時代には観察できる事はごく僅かで、空が毎晩おなじように同方向に回転しているという事だけだった。それ対して地球が頑強な土台で、その上には万物、すなわち男も女もあらゆる動物も、更には海やそこに住む魚まで、全てが乗っていて支えられている事は誰にでも見えた。

 他の人々にとって、事象が理論とは明らかに異なって見える時、その絶対的真理とされるものを盲信的に覆す力。ベルナールよ。これが君が熱狂的に信じていた人間の知性、世界の知性の力だ。そして我々もその力を信じる。アレクシマンドロスはまさに我々の相互理解のシンボルだ。

 そして君は、理性の分野には至る所に罠があることを知っていた。我々が間違いをおかさないように、根気強くプロトコルを批判し不正確な点を指摘してくれた。これもまた知性の一つだ。

 私は君と一緒にしている事にあまりにも夢中で、数ヶ月前から君が疲れた表情をしていたり、苦しみの気配を見せていたのに気がつかなかった。アルビで会った時もそうだった。君は何か隠していたのだろう? 私は愚かにも、その頃「不存在」について自分が考えていた事を君に真っ向からぶつけたが、君は何も言わなかった。

 ベルナール、君という人間の他の側面については、私には何も語る事は無い。ただロランスのカメラが捉えたこの一瞬のように、君とドゥニーズの歴史を物語る一コマがある。腹立たしいカトリックのリエージュ君主司教宮殿の板張り天井の下で、二人のユグノーがシャンパングラスを手に見つめ合っている絶妙な瞬間だ。



2012 りえぎにで

ロランス げず